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西鶴アーカイブ

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ラショーゲートの無限ループ

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(2014/9/30)
その無限ループは、その人が自らつくりあげている。
 
家も仕事も食い物もない その人が、ラショーゲートにたたづみ、思案しているとジジイが現れて過去に戻る方法を教えてくれた。「ただし1回だけにしとけよ、どえらいことになってもワシは知らん」
 
その人は、そんなジジイの声にテキトーに返事をして、どの過去に戻るか考えていた。
 
そうだ、あの時に帰ろう。あの分岐点に。あそこで選ぶ道を間違えなかったら、私は今のような寝る場所も仕事も飯もない、なさけない生活にはならなかったはずだ。
 
その人は、過去の分岐点に戻った。そして人生をやりなおし始めた。
 
その人の思惑どおりに、やり直した人生では寝る場所も仕事も手に入れたが、どうも気に入らない。もっと大きな家に、もっと大金持ちに、もっともっと。
 
その人はまたもや分岐点に戻り人生をやりなおし始める。だが、どうも気に入らない。金も大きな家も手に入れたが、今度は愛が欲しいと思った。
 
その人は、またまた分岐点に戻り人生をやりなおし始め、愛する人と出会った。優雅な人生が過ぎていったが、愛する人は歳をとりやがて死んでいった。
 
哀しみの中、その人はまた過去に戻る。愛する人が元気で楽しい日々を送っていたあの頃に。
 
その人はそうやって閉じられた輪を延々と歩いていく。何百年、何千年
 
 
 
過去に戻ることができたら、過去の自分とであってうんぬん・・・というお約束のパラドックスがある。けれど、そんなパラドックスよりも陥りやすいのは、こういった無限ループのほうではないだろうか?
 
地球上での時間つーのは時計のことだが、時計の計測値でない時間とは、影響の連続性だ。様々なモノが時間というバトンリレーをしている。だから、過去を否定することは時間の連続性を否定することになる。それは永遠ではあるが、閉じられた輪であり、約束された場所ではない。
 
 
 
様々な影響の連鎖がつながることで立体的に織り出される時間
 
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