読んだ本のブックレヴュー〜鬱屈精神科医占いにすがる〜
本は出会いだと思っている。
本屋をぶらぶらすると、時々そこに「おいでおいで」をしている本がいる。
ぱらぱらと中身をみてみたり、装丁デザインを見てみたり、作者のプロフィールを見てみたりするけれど、持ち帰るか否かを決めるのは、結局のところ「一目惚れ」したかどうかしかない。
なぜか、Amazonだと「おいでおいで」がない。この正体は何なのかいまだに解らないが、たしかに本屋には出会いの場が形成されていると思う。
この本もそうして出会った。先月、ちょっと頭がおかしかったんだと思うが、何万円分も本を買い込んで、まだ積んであるからしばらく本は買うまいと思っていたのだが、一目惚れしたのでしかたない。まあ、文庫だし、安いしーと誰にしてるのかわからない言い訳をしながらレジに向かう。
著者は精神科医のお医者さんらしい。内容は日記風のもので、精神分析とかは出てこない。ただ精神科医らしからぬ悩みを抱え、なぜか自己分析せずに占い師を頼り「占いジプシー」するという話だ。
これがオモロイ。何がオモロイのか考えてもさっぱり解らんのだが、オモロイ。文章がうまいのだろうか?共感を得るのいだろうか?何かハタと学んだり気がつくところがあるのだろうか?
どれもそうであるような気もするが、ちょっと違うような気もする。
ネットでレビューを検索してみる。「精神科医でも鬱々とした気分を抱えてるんだと安心しました」とか、「自分の心をここまで暴露するには勇気がいっただろう」とかの批評が並ぶ。
たぶん、これらのレビューを書いた人たちも、なにがオモロイか、解らなかったからこういうことを書いたんだろうなと思う。
著者の先生は、たぶん60代でこの本を書いたみたいだ。精神科医としての名声もありそうだし、本を何冊もだしてるらしい。なのに鬱々とした日々をおくっていて、本人もそう書いてるが、なんの不満もない人生じゃないかと思える。つい自分と比べて、ずいぶんと贅沢やんとも思える。
まあ、そんなこと思ってるワシも、誰かからみたらずいぶん贅沢に見えるだろう。朝は目覚ましで起きたこともなく、真っ昼間から縁側でコーシー飲みながら本を読んでる。
これがコーシーと本なので誤魔化されているが、パチンコとか酒だとクズだ。けど、そんなクズな生活を何十年もやってるわけで、それはいつしか生き方になっている。と、自分に言い訳しているのだ。
本屋をぶらぶらしてると、いろんな本が「おいでおいで」をしているが、まるでうるさい呼び込みみたいなコーナーがある。夜のまちの呼び込みmきたいな、腕をつかんで離さないみたいな。
それが自己啓発やら、ビジネス系やら、スピ系のコーナーだ。
最近は、健康系のコーナーでもこの手の呼び込みがふえてきた。
ちょっとちゃうねんなぁ。色っぽいけど、そんなんちゃうねん。
たぶんね、「上がりを決め込んだ」本をワシは求めてなんかいないのだ。
ゲームでいうとそれらは攻略本だ。なんかゲームのすみっこのバグみたいなとこに迷いこんで、ここにヘンなもんあるでっていう、そんな経験を求めているんだろう。
この本のあとがきにエピグラムの候補がかかれていた。
「一つ一つのことが明るみに出るたびにそれは、光ではなく、影をなげかけた」