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西鶴アーカイブ

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【愛と幻想のファシズム 令和版】

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狩猟社の鈴原冬二は、北海道の温泉でワシにこういった。

 


「日本ほどインフラが整備されている国はない。だから日本をリースするんだ。これしかない。

 


政府は未だにGDPをあげるなんて夢みたいなことを言ってるが、誰がそれをあげる化という主語が抜け落ちてしまっている。

 


我が国は今や年寄りばかりがあふれかえって、あがるのはGDPじゃなくて医療費のほうじゃないか。

 


人工知能が働いてくれるなんて脳天気なことを言ってるやつもいるが、民間に降りてくる人工知能の技術はたんなる検索エンジンの高度なものでしかない。

 


だから、日本を海外の国にリースする。土地、インフラ、システムそれらをマンスリーマンションみたいにリースするんだ。

 


そしてベーシックインカムを導入する。生活できるぎりぎりの金額だ。これで皆が住宅をシェアすることになるから、老人の孤立という問題も解決できし、子供の数も増えていくだろう。

 


教育制度は、今のようなシステムにうまくライドオンするためのものではなく、システムを構築できる人材を育てるほうにシフトする。そう教育された子供たちは20年もすれば世界で活躍しているだろう」

 


ワシはこの男は本当に狩猟社の鈴原なのかと思いはじめていた。

彼の言うプランには日本人のアイデンティテイというものをいかにして維持するかが抜け落ちているような気がしたからだ。

 


鈴原はワシのその疑問に答えるかのようにこういった。

 


「そこで重要なのがデザインだ。西鶴さん、デザインの定義はなんだ?」

 


「ああ、まあそうだな。嘘をつくことだな。ほんとうに腕のいいデザイン屋は誰にも見抜けない嘘をつける」

 


「そうだ。デザインは嘘をつく。そして経営は嘘を本当にする力をもっている。デザインは、経営とがっちりタッグを組んでこそのデザインだ。この二人三脚こそ重要なんだ」

 


なるほど、それを聞いてワシは納得した。彼はやはり狩猟社の鈴原だ。かれは日本人のアンデンティティをデザインし直せとワシに言っているのだ。

 


ジワジワと身体が温まってきたのは温泉のせいだけではなかった。

思いっきり大嘘をかましてやろう。それを本当にするのは目の前のこの男の仕事だ。