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西鶴アーカイブ

いろんなところに書いてきた文章のアーカイブ

現場という居場所〜a live 刹那の時間〜

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エヴァの最終章をアマプラで見たあと、同じくアマプラでNHK庵野くんに密着したドキュメンタリーも配信していたので見る。

ワシはこの手のメイキングが結構好きで、現場の雰囲気とかゴタゴタバタバタしながら作り上げる作業になぜか惹かれる。

そういや昔、宮崎駿の「もののけ姫」のビデオを買ったらメイキングビデオが付録でついてきたんだが、本編よりもメイキングのほうにワシはハマった。

んで当時やってたメーリングリストにその感想を書いたら、たまたまメイキングの制作会社の人が同じメーリングに参加していて、その人の書いた文章版の本をプレゼントされたことがある。

メイキングビデオも好きだが、本も好きで、最近読んだ宇宙戦艦ヤマトの西崎義展氏について書かれた本もオモロかった。

これらのメイキングの面白さは現場の空気が感じれるところだ。

そんな現場の空気が面白いからワシはこの手のドキュメントを好んで見るし、実際自分の仕事でも打ち合わせや写真撮影の現場が好きだし、会議やイベントの設営とか大好きだったりする。

近所で映画の撮影してた時は、時間があれば現場を見にいってた。が、出来上がった作品はとくに興味もなく見てなかったりする。

現場の空気っていうのは、ライブと似ている。ライブ=二度と取り戻せない刹那の時間。一期一会な時。英語でa liveとは人生という意味になる。

現場というのは多くの人が出入りし、なにかの目標に向けて分業をする。

それはライブでいうとセッションみたいなもので、ゴタゴタといろんな問題が起きたりするが、最終的になんらかの落とし所に着地しなければばらない。

それがライブの宿命であるし、着地点に至る道が現場である。
これはa liveも同じだ。ワシらは現場に生を灯す。

それぞれの生き方や考え方や個性やスキルや思惑や損得やらが絡み合い、もつれあい、寄り合い一本の糸になる。それは作為ではつくれないものを産み出す。計算では決して出来ないものだ。

ワシは自分の仕事でも、チームでやる場合はケンカしないとイイモノができないとまで言い切っていたこともあった。(これについては言いたいことが山のようにあるがまた今度)

庵野くんのメイキングも、庵野くんが鬱になったり、出来上がったAパートをスタッフが理解できなくて、脚本から描き直すと言い出したり、スタッフは皆、口あんぐりでイヤーな雰囲気が流れたりと、かなりもつれてる様子が写されていた。

メイキングではいろんな人に庵野くんのことを聞いているのだが、結構皆いい事はいわない。むしろ、このメイキングのほとんどがアンチアンノの愚痴でできていると言ってもいいぐらいだ。

明確に指示がでないとか、本人も分かってないとか、質問するだけ無駄とか、さらには庵野さんのことわかってる人はいないんじゃないかなとか、ジプリの鈴木さんとかは、大人になれなった子供で劇中のシンジくんと同じだと言い切る。

現場でもオケを出した次の舌でダメだしをする。ダメだししたかと思うと前に戻せという。右に振ったらいいのか左に振ったほうがいいのかわからない。任せるといいながら口をだす。

早いはなし、困った人で、困った上司で、困った発注主なのだ。

実際、大学の頃に参加してたダイコンフィルムでも、実に困ったぶりを発揮していたらしく、監督をクビになってる。

「自由にできるとこじゃないすか?いい意味でも悪い意味でも、他のとこはもっとプランがしっかりしてるから、自由にできる」とは、そんな困った人になぜついていくのかをドキュメンタリーのプロデューサーがスタッフに聞いたときのセリフだ。

が、これは質問に対する綺麗な答えだとワシは思った。

たしかにプランがしっかりしていたら作業は歯車になりがちだ。プランが無いとなんとかしなければならない。これを自由と言うなら聞こえはいいが、それほどシンドイものはない。

掴まって飛ぶのか、自分の羽で飛ぶのかの違いだ。

最後に作品が完成し、試写でスタッフは皆涙する。庵野くんは試写を見ずに次の仕事に向かう。

困った仕事に振り回されたスタッフたちは、困った度が高いほど完了の時には涙する。これはどんな現場も同じだ。

庵野くんは宮崎駿みたいな闘ってるカリスマ性もない。ヤマトの西崎さんみたいな破天荒な営業力を持つ戦略家でもない。始終モゴモゴと迷いながらつまんないと言ってる。

テレビアニメ終了後は、電車に飛び込もうとしたり屋上から飛び降りようとしたらしいが、劇中でウジウジするシンジくんにアスカがいうセリフ「どうせ生きていく気もないけど、死ぬ気もないんでしょ!」まんまである。

この庵野くんのグズグズぶりを、まー仕事だし、辞めるわけにもいかねーし、やり始めるちゃったしーと現場は回る。
この現場こそが庵野くんを結果とそて支えてるんじゃないだろうか?

困ったやつの居場所が現場なのだ。そこには目標がある。目標があるから困ったやつにも居場所ができる。それを庵野くん自身もよーくわかっているのだ。

だから庵野くんは、いい作品をつくり続けるしかないのだろう。仕事の中でしか生きていく場所がないのだろう。

よく好きなことを仕事にしなさいというけれど、本当は「これしかできない」というが本当のところだと思う。

好きというよりも好きにならないと生きていけない。これしかない。それが仕事であるなら、それは願ってもないことだろう。
アカン、なんか泣けてきた。

ドキュメンタリーにではなく、自分の言葉にだ。