turuya

西鶴アーカイブ

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約束

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(2015/5/25)
 
昨日見たよくわからん夢。
どっから沸いてきた妄想なのか?さっぱり解らんが、忘れんうちにものがたりにしてみた。
 
タイトルは、そーやねー「約束」つーのでどう?
 
打ちひしがれた男。どうもこの男、顔がない。手には自分の顔だったらしい仮面のようなものを持っている。足元にはまた仮面の顔が無数に散らばっている。
 
どうやら、この男は自分の顔がどれかわからなくなった役者のようだ。あまりにも完璧にその役になりきる。どんな奴にもなれる。人生は演じきる力量だというのがこの男の持論だったし、多くの人にもそう言ってきた。
 
が、今のこの有様はどうだ。一体どれが本当の自分だったのか?次々に顔を取り替えてみるが、どれもしっくりこない。そこにこの男の苦悩があるのだった。
 
男はある大根役者の声を思い出す。彼は今では役者はもちろん映画監督やコメディアンにと活躍している。何を演じてもそこに彼がいる。かつてはその演じきれないことに大根役者と陰口を叩かれていた。彼は男にかつてこう言ったのだ。
 
「おいらは演じるのが下手でさあ、だから役を自分の中に取り込むことにしよーかなーって、演じるのをやめちゃうみたいなー」
 
そこに一匹の黒犬がやってきた。口には一枚の顔をくわえている。犬は言った。
 
もう、これに決めちゃえ!
 
男はその顔をつけてみる。その時、男は悟ったのだ。
ああ、本来顔なんてなかったんだ。自分には顔なんてなかった。
自分に顔があるなんて幻想だったんだ。
探そうとしても見つからないはずだ。
 
ないものはない。
 
男はその顔で生きていくことを自分で決めた。
今日からこの顔が俺だ。そう決めるとその顔に自信が出た。
 
ものがたりは、もう終わりだ。
リアルとはこの顔のように自分でこれがリアルだと決めること。
それが顔に責任を持つことだ。自分に自分で約束することだ。
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