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西鶴アーカイブ

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仕事はある種カウンセリングみたいなもんだにゃ

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(2014/11/29)

仕事で打ち合わせをしていたら、その人の抱える「コア」みたいなものを感じる。
 
一担当者としてタンタンと仕事をしている人には感じられないが、企画の立案者とか、企業の社長とか店のオーナーや、任されている店長とかになると、打ち合わせ中に、コアの声がブンブンと飛び回る虫のように感じられる。
 
前に書いた社長の場合は、創業一族である親やじいさんのことを常に意識していて、それが彼の過度なプレッシャーになっているのが感じられる。本当は別にやりたいことがあったようだ。だが、どういう理由か引き継ぐことになった。
 
基本的に優しい男だ。だから社員のことも真剣に考える。こいつらとこいつらの家族を食わしてやらないと。そのプレッシャーが彼をイライラさせる。
 
季節物商売なので忙しいのは準備期間も含めて半年ほどだ。それ以外は、とくにすることもなく、機械も遊んでいる。半年で全員が飯をくえるんだからたいしたもんだが、暇な半年で別の事業を立ち上げようと苦戦し、本業からの穴埋めもしてきている。
 
具体的には書けないが、全社員の中で休職中の人間がやたら多い。ためしに他の会社と比べてみたが、たしかに多すぎる。その数字を見た時、ワシは正直ゾッとした。それはそういった制度が充実しているからという反面、壊れていくやつが多いという問題も内包する。
 
そんな社内の問題はすべてコアと紐付けされているようなことが見えてくる。
 
 
だが、これはワシの仕事ではないし、関係のないことだ。
 
ワシの仕事は、いわばオートクチュールの服をつくる洋服屋みたいものだ。頑張ってカッコイイ服をつくっても、似合わないとダサくなるし、そもそもサイズがあってないと意味がない。
 
高級な店なのにメニューがワープロという店は気分的になんだかなーとなるのと同じ。誰もそれを指摘はしないし、文句をいう奴もいないが、それは客の潜在意識に確実にインプットされる。
 
人は、理屈だけで金を払うことをしているんではない。商品を買うとき、店に金を払うとき、その決定権は潜在意識の方がサイフを握っているのだ。
 
中味にあう服をつくる。それは嘘をつかない広告であり、真摯な広告であり、それでないと致命的なダメージを与えてしまう。大手企業でもそういうことがわかっていないところは多い。仕事は詐欺でもギャンブルでもない。長期にわたってやっていくものだ。
 
だから、中味のコアが重要になる。これ以上分解できない素数がコアだ。ビジネスにおいて、戦略よりも重要なもの、それがコアだ。
 
打ち合わせで話をするとき、なぜこれをやりたいのか?どうしたいのか?そんなことをヒヤリングする。その過程で、分解をしてゆく作業が必要になる。そのとき、コアが出現する。
 
ある会社のキャラクターをつくった時はおもしろい体験をした。こちらが意図するのと違う感想が返ってくるのだ。具体的に書くと分かりやすいのだが、そうもいかないので抽象的に書くが、その感想を分解して一枚のチャート図にした。
 
それを眺めていると、その人が幼児期に父親が怖い存在だとインプットされているんではないかというコアが見え隠れしてくる。それとなく聞いてみると、たしかにそうなのだ。
 
その人は、ある「人を育てる仕事」をたちあげようとしていた。ああ、なるほど、そこにこの人の動機があるんだと一瞬で理解できた。さらに、そこが動機なら、陥る罠も想定できる。育てることが支配だとインプットされたこの人が、自分の父親のように支配することをしてしまわないようにしなければならない。そこがこの人のこれからのテーマになる。
 
 
それから興味をもって調べてみたら、これは臨床心理の分析と同じことをしているんだと気がついた。絵を描かせる、箱庭を作らせる、カードを引いて物語を作らせる。そんな作業から、その人でさえ気がつかない心の奥底に問題の芽を見つける。同じことだ。
 
もちろん、ワシはカウンセラーではない。そんなことを依頼されているわけではない。だけど、3回だけはそういうこと、つまり中味のことには触れるようにしている。3回というのはとくに決めた回数ではない。今までの仕事を振り返るとだいたい3回は言っているというだけだ。
 
服屋の例でいうと、「もうちょっとダイエットしてこんな服にしませんか」とか、「カジュアルすぎるから、もっと高級な感じもいいんじゃない」とか、時には「あんた裸エプロンじゃん」とか、「スーツに長靴かよ」ということもある。
 
もちろん、その人にあったものをつくる。だが、提案はする。服は中身が着るものだ。
 
来年ぐらいから、つまりエースがいなくなって1人になったら、じょじょにそういったこともやっていこうと決めている。5世代先を考えれ!これは、某会長の宿題だ。ワシに直接出されたものではないのだが、5世代先を考えるプロジェクトに関わったときに勝手に自分の宿題に決めた。
 
決めたときから、シンクロニシテイは始まる。本屋でも誰かと会話してても、そこにはヒントが満載にあることに気がつく。そしてそれは、ワシの新しいコアを形成する。

 

 
 
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